アルテミシニン(よもぎ抽出物)の効能

アルテミシニンはヨモギの抽出物

アルテミシニンは、中国のヨモギから抽出された抗マラリア薬であり、その効果が広く知られています。
一方、アルテメテートは、アルテミシニンをベースにした合成抗マラリア薬であり、より安定的、効果的であるとされています。

アルテミシニンを発見した、屠呦呦(Tu Youyou)にノーベル医学賞が贈られた

屠呦呦(Tu Youyou)は、1930年12月30日に中国の浙江省で生まれ、中国中医薬研究所で働く著名な科学者です。彼女は、1969年に中国政府の指示を受け、マラリアの治療法を見つけるためのプロジェクトに参加しました。当時、マラリアは中国でも大きな公衆衛生上の問題でした。

屠呦呦は、中国の伝統医学文献である「金縷石功略」(ジンルシゴンノエツ)などを研究し、その中からアルテミシニンを含む植物「ヨモギ」から抽出される可能性があることを発見しました。彼女は1967年にこのプロジェクトに加わり、約200種類の植物をテストした後、ヨモギからアルテミシニンを抽出する方法を見つけ出しました。

その後の研究で、アルテミシニンがマラリア原虫に対して効果的であることが確認され、1972年にアルテミシニンを含む抗マラリア薬「アルテメトール」が開発されました。アルテミシニンは、他の抗マラリア薬と比較しても効果が高く、特に耐性の低いマラリアに対して有効であることが示されました。

彼女の功績は、2015年 –  生理学・医学賞を受賞するに至り、これはノーベル賞が中国人女性科学者に初めて授与されたことを意味しました。
彼女の発見は、世界的なマラリア対策における重要な貢献と見なされ、彼女自身も「アルテミシニンの母」として称賛されています。

アルテミシニンアルテミシン

 

アルテミシニンの抗がん作用

アルテミシニンは、主にマラリア治療に使用される抗マラリア薬ですが、近年の研究により、抗がん作用も示唆されています。以下に、アルテミシニンの抗がん作用に関する主な事実を示します。

細胞毒性作用

アルテミシニンは、主にマラリア治療に使用される抗マラリア薬ですが、近年の研究により、抗がん作用も示唆されています。以下に、アルテミシニンの抗がん作用に関する主な事実を示します。

アポトーシス誘導

アルテミシニンは、がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導することが報告されています。これにより、がん細胞の増殖が抑制され、がんの進行が遅延する可能性があります。

血管新生抑制

アルテミシニンは、がんの進行や転移に関与する血管新生を抑制する作用があるとされています。これにより、がん細胞の栄養供給が阻害され、がんの成長が抑制される可能性があります。

免疫調節作用

アルテミシニンは、免疫系を調節する作用があるとされています。がん治療においては、がん免疫を活性化し、免疫細胞のがん細胞攻撃能力を高める効果が期待されています。

薬剤耐性の抑制

アルテミシニンは、がん細胞が薬剤耐性を獲得するのを防ぐ作用があるとされています。これにより、従来の抗がん薬との併用による効果的な治療法が可能になる可能性があります。

 

アルテミシニンとイベルメクチンの似ているところ

アルテミシニンとイベルメクチンは、両方とも重要な医薬品であり、特定の感染症の治療や予防に使用されますが、それぞれ異なる特性や効果を持っています。ただし、両者の間にはいくつかの類似点があります:

  1. 寄生虫に対する効果: 両方の薬剤は、寄生虫感染症の治療に使用されます。アルテミシニンはマラリアに対して特に効果的であり、イベルメクチンはフィラリア症や疥癬、糸状虫症などの他の寄生虫感染症に使用されます。

  2. 低コスト、公衆衛生への貢献: どちらも低コストで入手可能な医薬品であり、開発途上国や経済的に困難な地域での感染症の予防と治療に広く用いられています。

  3. 国際的な利用: 両方の薬剤は、世界保健機関(WHO)などの国際機関によって推奨され、世界中で広く使用されています。

  4. 感染症の流行に対する有効性: どちらの薬剤も感染症の流行や流行地域において、疾病の予防や制御に有効であることが示されています。

  5. 発見の経緯:アルテミシニンは中国の伝統医学に由来し、イベルメクチンは日本の土壌サンプルから発見された微生物が生産する化合物から開発されました。どちらも自然界から得られた成分を起源としています。

  6. 国際的な認知と受賞:アルテミシニンとイベルメクチンの発見と開発に携わった科学者は、その貢献によりノーベル賞を受賞しています。アルテミシニンの発見によりツー・ユーユーは2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、イベルメクチンの発見に関わったサトシ・オムラとウィリアム・C・キャンベルは2015年に同賞を受賞しました。