尚人(40代後半)は、数年前からEDを抱えたことで夫婦生活に壁を感じていた。妻の美紗(40代前半)は、そんな尚人を支えようと努めていたが、次第に感情の距離が広がり、二人は互いに孤独を抱え始める。
ある日、尚人は偶然にも美紗が浮気していることを知る。彼女のスマホに届いたメッセージを目にしたとき、妻が別の男性と深い関係を築いていることが明らかになる。
尚人は動揺しつつも、その場で問い詰めるのではなく、冷静に自分自身と向き合おうとする。しかし日常の中で、浮気の事実が心に棘のように刺さり続ける。妻が帰宅するたびにその笑顔の裏を疑い、平静を装おうとする自分に疲れ果てていく。
一方、美紗も浮気相手との関係に罪悪感を抱きながらも、尚人との生活に戻ることができない自分に気づいていた。彼女が浮気に走ったのは、単なる寂しさや体の欲求だけではなく、夫婦関係における愛情の欠如を埋めたいという切実な願いだったのだ。
尚人は美紗と本音で話し合うことを決意する。ある夜、二人はリビングのソファに座り、全てをさらけ出す形で対話を始める。尚人は「どうしてあの時、僕に言ってくれなかったんだ?」と問いかけ、美紗は「言ったところで、何も変わらなかったと思う」と答える。
二人の間に愛情が完全に消えたわけではなかった。しかし、壊れた信頼と心の傷はあまりにも深く、再び繋がることができる未来が見えない。
最終的に二人は別れることを選ぶ。尚人は静かに家を出て行き、新たな生活を始める決心をする。美紗も浮気相手との関係を清算し、自分自身を見つめ直す時間を取ることにした。
彼らはそれぞれが別々の道を歩む中で、「二人では幸せを作れなかったけれど、それでも過去を否定しない」という形で別れを受け入れる。尚人は離れる直前に「ありがとう、美紗」とだけ告げ、扉を閉める。
空っぽの家で、美紗は彼が残したカップに触れながら、静かに涙を流す。そして最後に、窓の外に広がる星空を見上げ、つぶやく。「私たち、最初からすれ違っていたのかもしれない」。
